牛乳、生クリーム、チーズ、ヨーグルト。
これらは、私たちの食生活の中で身近な食品です。
そして、パティシエにとっても非常に身近な存在です。
ケーキの生地に牛乳を使ったり、生クリームからクリームを作ったり、チーズを使ってチーズケーキを作ったり。
洋菓子を作るうえで、乳製品は欠かすことのできない材料の一つです。
では、これらの乳製品を「栄養」という視点から見たら、どのように見えるのでしょうか。
そこで今回取り上げるのが、カルシウムです。
カルシウムというと、「骨や歯に必要な栄養素」というイメージを持っている方が多いと思います。
もちろん、それはカルシウムを理解するうえで大切なポイントです。
しかし、カルシウムにはそれだけではない役割があります。
この記事では、カルシウムの基本を確認しながら、私が23年間パティシエとして扱ってきた乳製品を、今度は「栄養」という別の視点から見ていきます。
カルシウムとは、どんな栄養素?
カルシウムは、人体に必要なミネラルの一つです。
体内のカルシウムの大部分は骨や歯に存在しています。
そのため、
「カルシウム=骨」
というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
実際、カルシウムは骨や歯の主要な構成成分です。
しかし、カルシウムの役割はそれだけではありません。
体内では、神経や筋肉など、さまざまな生命活動にも関わっています。
つまりカルシウムは、
「骨を作るためだけの栄養素」ではない
ということです。
栄養素について学ぶときには、このように最初に持っていたイメージを少し広げていくことが大切です。
カルシウムは、身体の中でどこにある?
カルシウムは、体内に存在するミネラルの中でも特に多いものの一つです。
その大部分は骨や歯に存在しています。
一方で、血液や細胞などにもカルシウムが存在し、さまざまな生理機能に関わっています。
ここで面白いのが、
「骨にあるカルシウム」と「身体の機能に関わるカルシウム」
という二つの側面があることです。
私たちは普段、カルシウムを意識することなく生活しています。
しかし、身体の中ではカルシウムがさまざまな役割を担っています。
だからこそ、毎日の食事からカルシウムを摂ることを考える意味があります。
パティシエにとって、乳製品はどんな存在なのか
ここからは、少しパティシエの視点に切り替えてみましょう。
私が23年間パティシエとして仕事をしてきた中で、牛乳や生クリーム、チーズなどの乳製品は、とても身近な材料でした。
ただし、仕事中に「カルシウムを摂るために牛乳を使おう」と考えているわけではありません。
パティシエが材料を見るときには、まず製菓上の役割を考えます。
例えば牛乳。
牛乳は、単純に「水分を加える材料」ではありません。
レシピや製法によって、生地の状態や風味、焼き上がりなどに関係してきます。
生クリームであれば、乳脂肪を利用したクリームとして、ケーキの仕上げやムースなど、さまざまな場面で使われます。
チーズなら、種類によって風味や硬さ、口溶けなどが大きく異なります。
つまりパティシエにとって乳製品は、
「カルシウムを含む食品」より先に、「お菓子を作るための材料」
なのです。
これが、私が23年間仕事をしてきて身につけた食材の見方です。
ところが「栄養」という視点を加えると、見え方が変わる
ここが、今回の記事で一番伝えたいところです。
同じ牛乳を見ても、
パティシエとして見ると、
「生地にどのくらい加えるか」
「どんな風味に仕上げるか」
「ほかの材料とどう組み合わせるか」
ということを考えます。
ところが、栄養という視点に切り替えると、
「カルシウムを含んでいる」
「たんぱく質も含んでいる」
など、別の情報が見えてきます。
同じ食材なのに、見ているものが違います。
私は、この「視点を切り替える」という考え方を、Lumiaで大切にしたいと思っています。
牛乳はカルシウムを含む身近な食品
牛乳は、カルシウムを含む食品としてよく知られています。
文部科学省の「日本食品標準成分表・食品成分データベース」でも、牛乳や乳製品にはカルシウムが含まれていることを確認できます。
例えば乳製品を見てみると、カルシウムの量は食品の種類によって異なります。
チーズの場合、文部科学省の食品成分データベースでは、プロセスチーズ100gあたりのカルシウムが630mg、ゴーダチーズでは680mgとされています。
ただし、ここで注意したいのは、
「カルシウムが多い食品=たくさん食べればいい」
という単純な話ではないことです。
食品にはカルシウム以外にも、たんぱく質、脂質、ナトリウムなど、さまざまな栄養素が含まれています。
例えばチーズはカルシウムを含む一方で、種類によっては食塩相当量も多くなります。
プロセスチーズの食品成分データでは、100gあたりの食塩相当量は2.8gです。
つまり、
「カルシウムだけを見る」のではなく、食品全体を見る
ことが大切です。
これは、Lumiaで繰り返し伝えていきたい考え方です。
生クリームも「栄養」と「製菓」で見え方が変わる
生クリームも、パティシエにとって非常に身近な乳製品です。
ショートケーキの仕上げ、ムース、ガナッシュ、クリーム系のデザートなど、さまざまな洋菓子に使われます。
パティシエとして生クリームを見るなら、
「乳脂肪分は何%なのか」
「どの程度まで泡立てるのか」
「どんな口溶けにしたいのか」
「ほかの材料とどう合わせるのか」
といったことが重要になります。
一方、栄養の視点から見ると、
「脂質はどのくらい含まれているのか」
「カルシウムはどのくらい含まれているのか」
「エネルギーはどのくらいなのか」
という情報が重要になります。
ここでも、
同じ生クリームを見ているのに、パティシエと栄養では注目するポイントが違う
のです。
「乳製品=全部同じ」ではない
ここも大切なポイントです。
牛乳、生クリーム、ヨーグルト、チーズ。
すべて乳製品ですが、同じ食品ではありません。
製造方法も違いますし、栄養成分も異なります。
例えば、文部科学省の食品成分データベースでは、全脂無糖ヨーグルト100gあたりのカルシウムは120mgとされています。
一方、プロセスチーズ100gでは630mgです。
この違いを見るだけでも、
「乳製品なら何でも同じ」ではない
ことが分かります。
食品を考えるときには、「食品群」だけで判断するのではなく、実際に何をどのくらい食べるのかまで考える必要があります。
パティシエが見る「チーズ」と、栄養から見る「チーズ」
もう一つ、製菓の視点を入れてみましょう。
チーズは洋菓子でもよく使われる材料です。
特にチーズケーキでは、クリームチーズなどが重要な役割を担います。
パティシエとしてチーズを見るときには、
「酸味」
「コク」
「香り」
「乳脂肪」
「水分」
「生地との相性」
などを考えます。
チーズの種類を変えれば、同じチーズケーキでも味わいや口当たりは変わります。
23年間製菓に携わってきた私にとって、チーズは「カルシウムを摂る食品」というより、まず「お菓子の味や食感を作る材料」なのです。
しかし、栄養の視点を加えると、そこにカルシウムという情報が加わります。
例えばプロセスチーズやゴーダチーズは、食品成分データベース上でもカルシウムを多く含む食品です。
この二つの視点を合わせると、
「チーズケーキの材料としてのチーズ」
と
「カルシウムを含む食品としてのチーズ」
を同時に見ることができます。
これが、パティシエである私が栄養を考えるときの面白さです。
カルシウムはどのくらい必要なの?
では、カルシウムは一日にどのくらい必要なのでしょうか。
ここでは、現在使用されている厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」を見てみます。
例えば30〜49歳では、カルシウムの推奨量は男性750mg/日、女性650mg/日です。
50〜64歳では男性750mg/日、女性650mg/日とされています。
ただし、これはあくまで日本人の食事摂取基準に基づく数値です。
年齢や性別によって基準は異なります。
そのため、
「カルシウムは毎日○mg取れば全員同じ」
という考え方は適切ではありません。
また、サプリメントなどで自己判断して大量に摂取すればよいというものでもありません。
2025年版では、18歳以上のカルシウムの耐容上限量は男女とも2,500mg/日とされています。
健康を考えるなら、「不足しないようにする」だけでなく、必要以上に偏らないことも大切です。
カルシウムは「牛乳だけ」で考えなくてもいい
カルシウムについて考えるとき、
「牛乳を飲まなければいけない」
と思う必要はありません。
牛乳以外にも、ヨーグルト、チーズなどの乳製品があります。
さらに、カルシウムを含む食品は乳製品だけではありません。
小魚、豆腐などの大豆製品、緑色の野菜など、さまざまな食品があります。
つまり、
「牛乳を飲むか、飲まないか」
だけで考えるのではなく、
「普段の食生活の中で、どんな食品からカルシウムを摂っているか」
と考える方が、食生活全体を見渡しやすくなります。
カルシウムだけを見ないことが大切
ここで、第4記事と第5記事を思い出してみてください。
第4記事では「たんぱく質」を取り上げました。
牛乳や乳製品にも、たんぱく質が含まれています。
そして今回は「カルシウム」です。
つまり、一つの食品を見ても、
たんぱく質
カルシウム
脂質
など、複数の栄養素が存在しています。
このことを知ると、
「この食品はカルシウム食品」
という一面的な見方ではなく、
「この食品には、どんな栄養素がどのように含まれているのだろう?」
と考えられるようになります。
私は、こうした視点を身につけることが「栄養を学ぶ」ということの面白さだと思っています。
お菓子に使われる乳製品を「健康食品」にしない
ここで、Lumiaとして一つ明確にしておきたいことがあります。
牛乳やチーズなどがカルシウムを含むからといって、
「チーズケーキを食べればカルシウムが摂れるから健康に良い」
という話にはなりません。
チーズケーキはチーズだけでできているわけではありません。
砂糖、卵、小麦粉、クリームなど、さまざまな材料が使われます。
そしてレシピによって栄養成分も変わります。
これは、パティシエとして当然知っていることです。
お菓子は、栄養素の補給だけを目的に作っているものではありません。
味、香り、食感、見た目、楽しさ。
そうしたものを含めて「お菓子」なのです。
だからLumiaでは、
「お菓子を健康食品に変える」のではなく、「お菓子を楽しみながら、食生活全体の栄養を考える」
という考え方を大切にします。
パティシエだから見える「食材のもう一つの顔」
23年間、私は食材を製菓の材料として見てきました。
牛乳なら、
「どんな生地に使うか」
「どんな風味に仕上げるか」
生クリームなら、
「どのくらい泡立てるか」
「どんな口溶けにするか」
チーズなら、
「どんなチーズを選ぶか」
「どんな味の組み合わせにするか」
というようにです。
でも、栄養を学ぶようになると、そこにもう一つの視点が加わります。
牛乳なら、
カルシウムやたんぱく質を含む食品。
チーズなら、
カルシウムを含む食品であり、製品によって栄養成分も異なる食品。
ヨーグルトなら、
カルシウムなどを含む発酵乳。
このように、食材には「製菓材料」という顔だけではなく、「食品・栄養」というもう一つの顔があります。
私は、この二つの顔を知ることで、普段の食材がもっと面白く見えてくると思っています。
次に知りたいのは「ビタミンD」
カルシウムについて調べていくと、次に気になってくる栄養素があります。
それが、ビタミンDです。
カルシウムだけを知って終わりではなく、
「ほかの栄養素とはどのようにつながっているのだろう?」
と考えていくと、栄養の世界が少しずつ立体的になっていきます。
次回は、そんなカルシウムとの関係も考えながら、
「ビタミンDとは?健康を考えるために知っておきたい基本」
というテーマで、ビタミンDについて見ていきます。
さらにその先では、卵や乳製品、カカオ、ナッツなど、一つひとつの食品を取り上げ、
「パティシエから見ると、この食材はどんな存在なのか?」
そして、
「栄養から見ると、どんな食品なのか?」
という二つの視点から考えていきます。
これが、Lumiaが目指している「パティシエだからこそ書ける栄養ブログ」です。
まとめ
カルシウムは、人体に必要なミネラルの一つです。
特に骨や歯に多く存在していますが、それだけではなく、身体のさまざまな機能にも関わっています。
カルシウムを含む食品としては、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品が身近な存在です。
ただし、乳製品といっても食品によって栄養成分は異なります。
例えば、文部科学省の食品成分データベースでは、全脂無糖ヨーグルト100gあたりのカルシウムは120mg、プロセスチーズでは630mgとなっています。
そのため、
「乳製品だからカルシウムが同じように摂れる」
と考えるのではなく、
「どの食品を、どのくらい食べるのか」
という視点が必要です。
そしてパティシエにとって乳製品は、まず「お菓子を作るための材料」です。
しかし栄養の視点から見ると、そこにはカルシウムやたんぱく質など、さまざまな情報が見えてきます。
このように、
製菓の視点
と
栄養の視点
を行き来することで、いつもの食材を違った角度から見ることができます。
お菓子を健康食品として扱う必要はありません。
お菓子はお菓子として楽しみながら、普段の食生活ではさまざまな食品から栄養を摂る。
Lumiaでは、そんな「お菓子を楽しむこと」と「健康を考えること」の両立を考えていきます。
参考資料
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
文部科学省「食品成分データベース」
※本記事は、カルシウムと食品についての一般的な情報を紹介することを目的としています。特定の疾病の診断・治療・予防や、個人に対する栄養指導を目的としたものではありません。食事や健康について個別の相談が必要な場合は、医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。

