「たんぱく質をしっかり摂りましょう」
健康や食事について調べていると、よく目にする言葉です。
筋肉を作るために必要。
身体を作る材料になる。
肉や魚、卵、大豆製品などに多く含まれている。
こうした知識は、多くの方が一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
でも、たんぱく質について考えるとき、私はもう一歩踏み込んでみたいと思っています。
「たんぱく質は、私たちが普段食べている食品の中で、どんな存在なのだろう?」
そして、
「パティシエが普段使っている食材には、どのようなたんぱく質が関わっているのだろう?」
という視点です。
私は23年間、パティシエとして洋菓子に携わってきました。
卵、牛乳、バター、小麦粉、ナッツ、チョコレートなど、毎日のようにさまざまな食材を扱ってきました。
製菓の世界では、それぞれの食材が「お菓子を作るためにどんな働きをするのか」という視点で見ます。
卵なら泡立ちや凝固。
牛乳なら生地やクリームへの影響。
小麦粉なら生地の構造。
ナッツなら香りや食感。
ところが、栄養という視点を加えると、同じ食材がまったく違って見えてきます。
この記事では、たんぱく質の基本を学びながら、「栄養素」と「食品」、そして「洋菓子」をつなげて考えてみます。
そもそも、たんぱく質とは?
たんぱく質は、炭水化物、脂質と並ぶ「エネルギー産生栄養素」の一つです。
また、筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの身体を構成する成分であるほか、ホルモンや酵素、抗体など、身体のさまざまな機能にも関わっています。
つまり、
「たんぱく質=筋肉」
だけではありません。
私たちの身体を考えるうえで、幅広く関わっている栄養素なのです。
では、たんぱく質は何からできているのでしょうか。
その答えが、
アミノ酸
です。
たんぱく質は「アミノ酸」からできている
たんぱく質は、一つの物質ではありません。
さまざまなアミノ酸が結びついてできています。
人の身体のたんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あり、その組み合わせやつながる順番によって、さまざまなたんぱく質が作られています。
そして、この20種類のアミノ酸は、
必須アミノ酸
と
非必須アミノ酸
に大きく分けられます。
必須アミノ酸は、体内で十分に作ることができないため、食事から摂取する必要があります。成人では9種類が必須アミノ酸に分類されています。
ここで大切なのは、
「たんぱく質を食べる」=「たんぱく質のまま身体に取り込まれる」
というわけではないことです。
食事から摂ったたんぱく質は、消化されてアミノ酸などになり、体内に吸収されます。吸収されたアミノ酸は、必要に応じて身体のたんぱく質を作るためなどに利用されます。
「たんぱく質」という言葉の奥には、こうしたアミノ酸の世界があります。
「良質なたんぱく質」ってどういう意味?
栄養について調べていると、
「良質なたんぱく質」
という表現を目にすることがあります。
これは単純に「たんぱく質が多い食品」という意味ではありません。
食品に含まれるたんぱく質は、どのようなアミノ酸で構成されているかによって、体内での利用のされ方が異なります。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、良質なたんぱく質食品について、たんぱく質の含有量が多く、利用率の高い食品として説明し、卵類、肉類、豆類などを例に挙げています。
ここでも、
「たんぱく質が多ければ、それだけで良い」
と単純化しないことが大切です。
食品には、たんぱく質以外にもさまざまな栄養素が含まれています。
だからこそ、特定の食品だけに注目するのではなく、食事全体を見ることが大切になります。
たんぱく質は、どんな食品に含まれている?
では、実際の食品を見てみましょう。
たんぱく質を含む食品として、代表的なのは、
肉
魚
卵
乳製品
大豆・大豆製品
などです。
そして、ここからがLumiaらしいところです。
私はパティシエとして、これらの食品の一部を「栄養素」ではなく、「製菓材料」として長年見てきました。
例えば卵。
牛乳。
小麦粉。
ナッツ。
カカオ。
普段は「お菓子を作るための材料」として見ている食材です。
しかし、栄養という視点を持つと、別の顔が見えてきます。
卵を見ると「たんぱく質」がもっと身近になる
洋菓子を作るうえで、卵は非常に重要な材料です。
スポンジ生地、カスタードクリーム、プリン、シュー生地など、さまざまなお菓子に使われています。
パティシエは卵を見ると、
「どのように泡立つか」
「どのくらい加熱すると固まるか」
「生地にどのような状態を作るか」
といった製菓上の性質を考えます。
一方、栄養という視点では、
「卵にはたんぱく質が含まれている」
という見方ができます。
つまり、同じ卵でも、
パティシエ → 製菓材料
栄養 → 食品・栄養素の供給源
という二つの見方ができるわけです。
私は、この二つの視点を行き来すると、食材がとても面白く見えてくると思っています。
そして、これこそがLumiaで伝えていきたいことの一つです。
牛乳や乳製品にも目を向けてみる
牛乳や乳製品も、洋菓子には欠かせません。
生地やクリームなど、さまざまな場面で使われています。
栄養という視点から見ると、牛乳や乳製品はたんぱく質を含む食品です。
さらに、乳製品については、今後Lumiaで取り上げる予定のカルシウムなど、たんぱく質以外の栄養素についても考えることができます。
ここが面白いところです。
一つの食品には、一つの栄養素しか入っているわけではありません。
例えば牛乳を、
「たんぱく質を摂る食品」
だけで終わらせるのではなく、
「たんぱく質も含み、カルシウムなどについても考えられる食品」
として見ることができます。
こうして食品を立体的に見るようになると、栄養の勉強も少し身近になってきます。
ナッツも「お菓子の材料」から見方を変えてみる
アーモンドやくるみなどのナッツも、洋菓子ではおなじみの材料です。
焼き菓子に使ったり、クリームに加えたり、トッピングにしたり。
香ばしさや食感を加えてくれる、とても魅力的な食材です。
そして栄養という視点を持つと、ナッツについてもたんぱく質を含む食品として考えることができます。
ただし、ナッツはたんぱく質だけを取り出して考える食品ではありません。
脂質など、ほかの栄養素も含まれています。
だからこそ、
「ナッツ=たんぱく質食品」
と単純化するのではなく、
「ナッツにはさまざまな栄養素が含まれている」
と考えるほうが、実際の食品に近い見方になります。
この「一つの食品を一つの栄養素だけで決めつけない」という考え方は、Lumiaではこれからも大切にしていきたいと思います。
小麦粉にも「たんぱく質」がある
ここで、パティシエとしてぜひ触れておきたい食材があります。
小麦粉です。
小麦粉というと、
「炭水化物」
というイメージが強いかもしれません。
確かに、小麦粉は炭水化物を含む食品です。
しかし、小麦粉にはたんぱく質も含まれています。
そして製菓の世界では、この小麦粉に含まれるたんぱく質が、お菓子作りにも関わってきます。
小麦粉に水を加えてこねたり混ぜたりすることで、グルテンが形成され、生地の性質に影響します。
ここには、
「栄養としてのたんぱく質」
と
「製菓材料としての小麦粉に含まれるたんぱく質」
という、二つの面があります。
ただし、ここは注意したいところです。
食品に含まれる「たんぱく質」と、製菓における「グルテン」の役割は同じものとして説明するべきではありません。
栄養学と製菓学では、同じ食材でも見ているポイントが異なるからです。
この違いを知ると、
「食材を一つの視点だけで見ない」
ことの面白さが分かってきます。
「たんぱく質を摂る」だけで終わらせない
ここまで読んで、
「では、たんぱく質をたくさん摂ればいいの?」
と思った方もいるかもしれません。
しかし、ここでも「多ければ多いほど良い」と単純に考えないことが大切です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、たんぱく質について、年齢などに応じた推定平均必要量や推奨量、目標量などが設定されています。2025年版は2025年度から2029年度まで使用される現行の基準です。
また、たんぱく質だけを切り離して考えるのではなく、炭水化物や脂質など、ほかの栄養素とのバランスも考える必要があります。
つまり、
「たんぱく質を摂ること」
ではなく、
「さまざまな食品から栄養を摂り、食生活全体を考えること」
が大切なのです。
パティシエだから見えてくる「たんぱく質」の面白さ
ここで、少しだけパティシエとしての視点に戻ってみます。
洋菓子を作るとき、私たちは材料を一つひとつの「機能」で考えます。
卵はどう働くのか。
小麦粉はどう働くのか。
牛乳はどう働くのか。
ナッツはどう働くのか。
そして、加熱したらどう変化するのか。
混ぜたらどうなるのか。
泡立てたらどうなるのか。
こうした「食品の性質」を理解することは、パティシエにとって基本的なことです。
ところが、栄養の勉強を始めると、同じ食材に別の情報が加わります。
卵 → たんぱく質
牛乳 → たんぱく質・カルシウムなど
ナッツ → たんぱく質・脂質・ミネラルなど
小麦粉 → 炭水化物・たんぱく質など
このように考えていくと、
「お菓子を作るための材料」
だったものが、
「さまざまな栄養素を含んだ食品」
として見えてきます。
これは、23年間パティシエとして働いてきた私自身が、栄養について考えるようになって感じた面白さでもあります。
お菓子を「健康食品」にする必要はない
ここは、Lumiaとして明確にしておきたいところです。
私は、お菓子を「健康食品」として紹介したいわけではありません。
ケーキや焼き菓子を食べれば健康になる、という話でもありません。
お菓子には砂糖や脂質なども含まれますし、食品によって栄養成分は大きく異なります。
だからこそ、
お菓子は、お菓子として楽しむ。
そのうえで、
「このお菓子にはどんな食材が使われているんだろう?」
「この材料にはどんな特徴があるんだろう?」
「この食材にはどんな栄養素が含まれているんだろう?」
と興味を広げていく。
私は、そんな付き合い方があってもいいと思っています。
Lumiaが目指しているのは、
「お菓子を健康食品にすること」ではなく、「お菓子を栄養への入口にすること」
です。
たんぱく質を知ると、次に知りたくなること
たんぱく質について知ると、次から次へと疑問が生まれてきます。
「卵にはどんな栄養素が含まれている?」
「牛乳には?」
「ナッツには?」
「肉や魚と比べるとどう違う?」
「植物性食品のたんぱく質は?」
こうした疑問を一つずつ掘り下げていくと、栄養の知識は「暗記するもの」から「食品を理解するための道具」に変わっていきます。
そして、ここからLumiaの記事も、
栄養素
から
食品
へと少しずつ広がっていきます。
例えば今後、
「卵の栄養をパティシエの視点から考える」
「乳製品とカルシウムを考える」
「ナッツの栄養と洋菓子」
「カカオにはどんな栄養素が含まれている?」
といったテーマへ進むことができます。
これらは、単なる栄養記事ではありません。
「パティシエが、製菓材料を栄養という視点から見てみる記事」
です。
ここに、Lumiaならではの面白さを作っていきたいと思います。
まとめ
今回は、たんぱく質について基本から考えてみました。
たんぱく質は、炭水化物・脂質とともにエネルギー産生栄養素の一つです。
そして、筋肉や臓器、皮膚、毛髪などの身体を構成する成分となるほか、ホルモンや酵素、抗体などにも関わっています。
たんぱく質はアミノ酸から構成されており、食事から摂ったたんぱく質は消化・吸収され、必要に応じて体内で利用されます。
そして、たんぱく質を含む食品は、
肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など
さまざまです。
さらに、パティシエという視点を加えると、
卵
牛乳
小麦粉
ナッツ
カカオ
など、普段のお菓子作りで使っている材料も、栄養という視点から見ることができます。
ここが、私がLumiaで伝えたいことです。
食材は、一つの視点だけで見る必要はありません。
パティシエなら「お菓子を作る材料」として。
栄養という視点なら「栄養素を含む食品」として。
そして、一人の食べる人としてなら「毎日の食生活を構成する食品」として。
同じ食材でも、視点を変えるだけで新しい発見があります。
これからLumiaでは、そんな「食材の見方」を一つずつ掘り下げていきます。
次回は、今回登場した食材の中でも、洋菓子には欠かせない**「卵」**に注目してみたいと思います。
卵は、お菓子作りでは「泡立つ」「固まる」「つなぐ」など、さまざまな働きを持つ材料です。
では、栄養という視点から見ると、卵はどんな食品なのでしょうか。
パティシエとして長年扱ってきた「卵」を、今度は栄養の視点から見てみましょう。
参考資料
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
厚生労働省 e-ヘルスネット「たんぱく質」
厚生労働省 e-ヘルスネット「アミノ酸」
※本記事は、たんぱく質と食品についての一般的な情報を紹介することを目的としています。特定の疾病の治療・予防や、個人に対する栄養指導を目的としたものではありません。食事や栄養について個別の指導を受けている場合は、医師や管理栄養士など専門家の指示を優先してください。

