鉄とは?身近な食材から考える、パティシエと栄養の話

栄養・食生活

「鉄分をしっかり摂りましょう」

健康や食生活について調べていると、鉄という栄養素について目にする機会は多いと思います。

鉄というと、まず「血液」や「貧血」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

実際、鉄は私たちの身体にとって欠かせないミネラルの一つです。体内の鉄の多くは、赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンの構成要素として存在しています。

では、鉄は普段どんな食品から摂っているのでしょうか。

そして、パティシエが普段扱っている食材を「鉄」という栄養素の視点から見ると、どんなことが見えてくるのでしょうか。

私は23年間、パティシエとして洋菓子に携わってきました。

仕事では、卵、小麦粉、牛乳、バター、ナッツ、チョコレート、果物など、たくさんの食材を扱います。

パティシエは、食材を「お菓子を作るための材料」として見ることが多い仕事です。

しかし、栄養について学んでいくと、同じ食材を別の角度から見ることができます。

この記事では、鉄の基本を学びながら、

「製菓材料としての食材」
から
「栄養を含む食品としての食材」

へ視点を切り替えてみたいと思います。


そもそも、鉄とはどんな栄養素?

鉄は、人体の構成に欠かせないミネラルの一種です。

成人の体内には約3~4gの鉄が存在し、その約70%は赤血球中のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンの構成要素として存在しています。残りの一部は、肝臓や骨髄などに貯蔵鉄として蓄えられています。

ここで重要なのが、

鉄は「血液だけ」に存在する栄養素ではない

ということです。

鉄は、身体の中でさまざまな形で存在し、利用されています。

特に重要なのがヘモグロビンです。

ヘモグロビンは赤血球に含まれるたんぱく質で、酸素の運搬に関わっています。

つまり鉄について考えるとき、

鉄だけを見るのではなく、たんぱく質との関係も見えてくる

のです。

第4記事では「たんぱく質」を取り上げましたが、栄養素はそれぞれ独立して存在しているわけではありません。

一つの栄養素を知ると、別の栄養素とのつながりも見えてきます。

これが栄養を学ぶ面白さの一つです。


鉄が不足するとどうなる?

鉄が不足すると、貧血につながることがあります。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、体内の鉄が不足して貧血になると、筋肉への酸素供給量が減り、筋力低下や疲労感などが起こることが説明されています。

ただし、ここで注意したいことがあります。

「疲れやすいから鉄不足だ」

「だるいから鉄を摂ればいい」

と自己判断することはできません。

疲労感などの症状にはさまざまな原因が考えられるためです。

Lumiaでは、健康に関する情報を扱うとき、

「この栄養素が不足すると、必ずこの症状が起こる」

という単純な説明は避けます。

鉄についても、まずは「身体に必要なミネラルである」という基本を理解し、普段の食生活を考えるための知識として捉えていきます。


鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」がある

鉄について調べると、よく出てくる言葉があります。

それが、

ヘム鉄

非ヘム鉄

です。

食品に含まれる鉄には、この2種類があります。

ヘム鉄は肉や魚などに含まれ、非ヘム鉄は野菜などに含まれます。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、ヘム鉄は非ヘム鉄より吸収されやすく、動物性たんぱく質やビタミンCを一緒に摂ることで、鉄を吸収しやすくすることが説明されています。

ここで興味深いのが、

「鉄を含む食品を食べる」

だけではなく、

「どのような食品と組み合わせるか」

という視点です。

これは、Lumiaで大切にしたい「食品を単体で見ない」という考え方にもつながります。


パティシエは食材を「鉄」から見ることがある

では、ここでパティシエの視点に戻ってみましょう。

パティシエが仕事で食材を見るとき、最初に考えるのは栄養素ではありません。

例えば、

卵なら「泡立つか」「固まるか」。

小麦粉なら「どんな生地になるか」。

牛乳なら「どんな口当たりになるか」。

ナッツなら「香りや食感をどう生かすか」。

チョコレートなら「カカオの風味や口溶けをどう表現するか」。

このように、製菓上の性質を見ています。

23年間パティシエをしてきた私自身も、仕事ではこうした視点で食材と向き合ってきました。

ところが、栄養という視点を持つと、同じ食材に別の情報が加わります。

例えばナッツ。

製菓では、香ばしさや食感、風味を加える材料として考えます。

しかし栄養という視点から見ると、たんぱく質や脂質、ミネラルなどを含む食品として見ることができます。

つまり、

製菓材料としてのナッツ

栄養を含む食品としてのナッツ

という二つの見方ができるわけです。

この「見方を切り替える」という感覚こそ、私がLumiaで伝えていきたいことです。


鉄を考えると、洋菓子の材料だけでは足りないことに気づく

ここで、あえて少し視点を変えてみます。

鉄について考える場合、洋菓子の材料だけで食生活を考えることはできません。

鉄を多く含む食品として、レバー、赤身の肉や魚、小松菜、ほうれん草などが挙げられます。

これらは、パティシエが洋菓子を作るときに中心的に使う材料ではありません。

だからこそ、鉄というテーマは面白いのです。

第4記事の「たんぱく質」では、卵や乳製品、ナッツ、小麦粉など、比較的製菓材料とつなげやすい食品を取り上げました。

一方、鉄では、

「お菓子の材料だけではなく、普段の食事全体を見る」

必要があります。

これは、Lumiaにとって重要な考え方です。

お菓子を楽しむことと、健康的な食生活を考えることは、どちらか一方を選ばなければならないものではありません。

お菓子はお菓子として楽しみながら、食事では肉、魚、野菜、豆類など、さまざまな食品から栄養を摂る。

そんなふうに、食生活全体を考えていくことが大切です。


「鉄を摂るならレバー」だけでは終わらせない

鉄について検索すると、

「鉄ならレバー」

という情報を見かけることがあります。

確かにレバーは鉄を含む食品の代表例です。

しかし、栄養について考えるときに、

「鉄=レバー」

と単純化してしまう必要はありません。

赤身の肉や魚、野菜などにも鉄を含む食品があります。

また、鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、それぞれ食品中での形態が異なります。

大切なのは、

「鉄を含む食品を一つ覚える」

ことではなく、

「鉄を含む食品にはいろいろな種類がある」

と理解することです。

これは、Lumiaが目指している「栄養を暗記ではなく、食品から理解する」という考え方にもつながります。


パティシエにとっての「チョコレート」と栄養の視点

ここで、パティシエらしい食材を一つ取り上げてみましょう。

チョコレートです。

チョコレートは洋菓子に欠かせない材料の一つです。

パティシエは、カカオの風味、甘味、苦味、口溶け、テンパリングなど、さまざまな要素を考えながらチョコレートを扱います。

ところが、栄養の視点からカカオを見ていくと、また違った世界が見えてきます。

カカオ由来の食品には、鉄を含むものもあります。

ただし、ここでも、

「チョコレートを食べれば鉄を十分に摂れる」

という話にはなりません。

チョコレート製品には砂糖や脂質なども含まれ、製品によって栄養成分は大きく異なるためです。

だからこそ、Lumiaでは、

「お菓子に含まれる栄養素を知る」

ことと、

「お菓子を健康食品として扱う」

ことを明確に区別します。

これは今後、「カカオ」を取り上げる記事でも大切にしたい視点です。


鉄は「一つの食品」ではなく「食生活」で考える

鉄について知ると、

「何を食べればいい?」

という疑問が出てきます。

しかし、私は、

「鉄を摂るための特別な食品を探す」

という考え方だけにしたくありません。

肉、魚、野菜、豆類など、さまざまな食品を組み合わせて食べる。

そして、鉄だけではなく、たんぱく質やビタミンなど、ほかの栄養素についても考える。

そうすることで、栄養素同士のつながりが見えてきます。

現在の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、2025年度から2029年度まで使用される現行の基準です。鉄についても、年齢や性別などに応じて推定平均必要量や推奨量などが設定されています。

つまり、「鉄は○mg摂れば全員大丈夫」という単純なものではありません。

年齢や性別などによって必要量は異なります。

栄養を考えるときには、このような違いも知っておく必要があります。


パティシエだからこそ、食材を「二つの目」で見る

私は23年間、パティシエとして仕事をしてきました。

その中で身につけてきたのは、単に「お菓子を作る技術」だけではありません。

食材を見て、

「この材料にはどんな性質があるのか」

「どう扱えば、その特徴を生かせるのか」

「ほかの材料と組み合わせるとどう変化するのか」

と考える習慣です。

そして今、栄養について学ぶことで、そこにもう一つの視点が加わりました。

「この食材には、どんな栄養素が含まれているのだろう?」

例えば卵なら、

製菓では「泡立つ」「固まる」。

栄養では「たんぱく質などを含む食品」。

牛乳なら、

製菓では「生地やクリームなどに使う材料」。

栄養では「たんぱく質やカルシウムなどを含む食品」。

ナッツなら、

製菓では「香りや食感を加える材料」。

栄養では「たんぱく質、脂質、ミネラルなどを含む食品」。

このように、同じ食材を二つの目で見ることができます。

私は、この「二つの目」をLumiaの記事の大きな特徴にしていきたいと思っています。


お菓子を楽しむことと、健康を考えることは両立できる

Lumiaでは、健康を理由にお菓子を遠ざけることを目的にはしていません。

パティシエとして、私はお菓子の魅力を知っています。

香り。

甘さ。

食感。

口溶け。

見た目。

そして、一口食べたときの幸福感。

お菓子には、栄養素の数字だけでは表せない価値があります。

だからこそ、

お菓子は楽しむ。

その一方で、

毎日の食事では、身体に必要な栄養について考える。

そんなバランスがあってもいいと思っています。

鉄について知ることも、その一つです。

「鉄が足りないかもしれないから、何か特別なものを食べなければ」

と考える前に、

「普段、自分はどんな食品を食べているだろう?」

と振り返ってみる。

そこから始めてもいいのではないでしょうか。


まとめ

今回は、「鉄」という栄養素について考えました。

鉄は人体に必須のミネラルで、主にヘモグロビンやミオグロビンの構成要素として存在しています。

食品に含まれる鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄があり、肉や魚、野菜など、さまざまな食品から摂取することができます。

そして、鉄について考えてみると、栄養は「一つの食品を覚えること」ではなく、

さまざまな食品を組み合わせて食生活全体を見ること

が大切だと分かります。

パティシエという仕事では、卵、小麦粉、牛乳、ナッツ、チョコレートなどを「お菓子を作るための材料」として見ます。

しかし、栄養という視点を加えると、

「この食材には、どんな栄養素が含まれているのだろう?」

という新しい見方ができます。

この二つの視点を行き来することで、いつもの食材が少し違って見えてきます。

これが、Lumiaで伝えていきたい「お菓子と健康」のつながりです。

お菓子を健康食品に変える必要はありません。

お菓子はお菓子として楽しみながら、普段の食生活ではさまざまな食品から栄養を摂る。

そして、食べているものについて少しずつ知っていく。

そんなところから、健康について考えてみてはいかがでしょうか。

次回は、洋菓子には欠かせない「乳製品」とも深く関係する、カルシウムについて取り上げます。

牛乳やチーズ、生クリームなど、パティシエにとって身近な食材を、今度は「カルシウム」という栄養素の視点から見てみましょう。


参考資料

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
厚生労働省 e-ヘルスネット「鉄」


※本記事は、鉄と食品についての一般的な情報を紹介することを目的としています。特定の疾病の診断・治療・予防や、個人に対する栄養指導を目的としたものではありません。体調や食事について個別の相談が必要な場合は、医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。

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