
シフォンケーキを切ってみたら、断面に大きな穴がいくつも開いている。
見た目はきれいに膨らんでいても、カットしたときに大きな空洞があると、「なぜこんな穴ができたのだろう?」と気になります。
シフォンケーキの内部には、もともとメレンゲによって作られた細かな気泡があります。焼成中にはその気泡が膨張し、生地を押し広げながらシフォン特有の軽い食感を作ります。
問題になるのは、その気泡が均一に分散せず、一部に集まってしまうことです。
現場のパティシエなら、大きな穴を見つけたときに「焼き上がった後にできた」とは考えません。まず、生地を作る段階で気泡がどのような状態になっていたのかを確認します。
特に重要なのが、メレンゲと卵黄生地を合わせる工程です。
メレンゲが十分に均一でなかったり、混ぜ合わせるときに大きな塊のまま残ったりすると、生地の中に大きな気泡が残ることがあります。
反対に、気泡を壊さないように意識しすぎて混ぜ方が不足すると、メレンゲと卵黄生地が均一にならず、部分的にメレンゲの大きな気泡が残ってしまうことがあります。
つまり、「気泡を壊さない」と「きちんと均一に混ぜる」は、どちらも必要です。
また、型に生地を流し入れるときの状態も関係します。
生地の中に大きな気泡が残ったまま型に入ると、その気泡が焼成中に大きくなり、内部に空洞を作ることがあります。そのため、型に流した後に軽く衝撃を与えて大きな気泡を抜く方法もあります。
ただし、ここでも「強く何度も型を叩けばいい」と考えるのは適切ではありません。せっかく作った気泡構造まで壊してしまう可能性があるからです。
現場のパティシエなら、焼き上がったシフォンケーキの穴だけを見て判断しません。
メレンゲの状態はどうだったか。卵黄生地との合わせ方は適切だったか。生地の中に大きな気泡の塊が残っていなかったか。型に流すときに生地を偏らせていなかったか。
こうした工程を順番に確認します。
シフォンケーキは「たくさん空気を入れれば膨らむ」という単純なものではありません。
必要なのは、大きな気泡ではなく、焼成後の生地を支えられるような、できるだけ均一な気泡構造です。
前の記事で扱った「シフォンケーキがしぼむ原因」も、実はこの気泡構造と深く関係しています。
しぼみは、膨らんだ構造を支えられない問題。
大きな穴は、気泡が均一に分散していない問題。
どちらも、シフォンケーキの「ふわっと膨らむ」という現象を、気泡と生地の構造から考えると原因が見えてきます。
大きな穴をなくしたいなら、「焼き方」だけを見るのではなく、メレンゲを作るところから、生地を合わせ、型に流すところまでを振り返ってみる。
シフォンケーキの断面は、生地作りの結果を教えてくれる一つのサインなのです。



