ショートケーキといえば、いちご。
いちごタルト、いちごのムース、いちごのミルフィーユ……。洋菓子店を見渡すと、いちごを使ったお菓子は驚くほどたくさんあります。
では、なぜパティシエはいちごをこれほどお菓子に使うのでしょうか。
「甘くておいしいから」
もちろん、それも理由の一つです。
でも、パティシエの目から見ると、いちごには洋菓子を作るうえで、とても面白い魅力があります。
いちごは「甘い」だけではない
いちごを食べたとき、最初に感じるのは甘味でしょうか。それとも酸味でしょうか。
実は、この「甘味と酸味のバランス」が、洋菓子では大きな意味を持っています。
例えば、生クリームをたっぷり使ったショートケーキを想像してみてください。
クリームのまろやかな味わいに、いちごの甘酸っぱさが加わることで、味にメリハリが生まれます。
もし、いちごまで甘味だけだったらどうでしょう。
おいしいかもしれませんが、ケーキ全体が単調に感じられる可能性があります。
いちごの酸味は、クリームやスポンジなどの味わいを引き立てる役割も持っているのです。
パティシエが見る「いちごの魅力」
パティシエがいちごを見るとき、「甘そうかどうか」だけを見ているわけではありません。
香りはどうか。
酸味はどうか。
果肉の状態はどうか。
水分は多いか。
そして、お菓子に使ったときにどのような状態になるのか。
同じいちごでも、食べるためのいちごと、お菓子に使いたいいちごでは、求めるポイントが少し違ってきます。
例えば、ショートケーキなら、見た目の美しさも重要です。
一方、ソースやコンフィチュールにするのであれば、形が多少崩れていても、香りや味が魅力的ないちごが活躍します。
「いちご」という一つの食材でも、使い方によって見方が変わる。
ここが製菓の面白いところです。
なぜ「赤」が洋菓子をおいしそうに見せるのか
いちごの魅力は、味だけではありません。
鮮やかな赤色も、洋菓子との相性が抜群です。
白い生クリーム。
淡い色のスポンジ。
そこに赤いいちごが乗る。
それだけで、ケーキの印象が華やかになります。
タルトでも、白や黄色のクリーム、焼き色のついたタルト生地に、いちごの赤色が加わることで視線を引きつけます。
洋菓子は「味」だけでなく、「見た目」も楽しむ食べ物です。
いちごは、その両方に大きく貢献してくれる食材なのです。
いちごは「組み合わせ」でさらに面白くなる
いちご単体でもおいしい食材ですが、洋菓子では他の材料と組み合わせることで、さらに魅力が広がります。
生クリームと合わせれば、まろやかさの中に甘酸っぱさが加わります。
チョコレートと合わせれば、濃厚な味わいの中にいちごの酸味がアクセントになります。
カスタードクリームと合わせれば、卵や乳製品のコクといちごの爽やかさを楽しめます。
このように考えると、洋菓子作りは「おいしい材料を集める」だけではありません。
それぞれの材料が持っている特徴を考え、組み合わせることで、一つの味を作っているのです。
パティシエから見ると、いちごは「完成品」ではない
いちごは、そのまま食べてもおいしい食材です。
しかし、パティシエにとっては、そこからさらに可能性が広がります。
スライスして飾る。
ピューレにする。
ソースにする。
コンフィチュールにする。
ムースに加える。
焼き菓子に組み合わせる。
同じいちごでも、加工方法によって味、香り、食感、見た目の印象が変わります。
だからこそ、いちごを使った洋菓子には、毎年のように新しい表現が生まれます。
「いちごを使ったお菓子」と一言で言っても、実際にはとても幅が広いのです。
ところで、いちごにはどんな栄養がある?
ここで少しだけ栄養にも目を向けてみましょう。
いちごには、ビタミンCなどの栄養素が含まれています。
文部科学省の食品成分データベースによると、生のいちご100gにはビタミンCが62mg含まれています。
ただし、いちごを使ったケーキやタルトになると、話は変わります。
生クリーム、砂糖、小麦粉、バターなど、さまざまな材料が加わるからです。
だからこそ、「いちごは栄養があるから、いちごのお菓子も健康的」と単純に考えるのではなく、使われている材料全体を見ることが大切です。
Lumiaでは、こうした「食材そのもの」と「お菓子になった状態」の違いも、これから大切にしていきたいと思います。
いちごを見ると、お菓子の見方が変わる
スーパーでいちごを見かけたとき、これまでは「おいしそう」と思うだけだったかもしれません。
でも、
「このいちごなら、どんなケーキに合うだろう?」
「酸味が強いなら、甘いクリームと合わせたらどうなるだろう?」
「この香りを生かすなら、加熱しないほうがいいのだろうか?」
そんなことを考えてみると、食材を見ること自体が少し楽しくなります。
パティシエは、食材を「そのまま食べるもの」としてだけではなく、「どんなお菓子にできるか」という視点でも見ています。
いちごは、そのことを教えてくれる代表的な食材なのかもしれません。
まとめ
いちごが洋菓子に使われる理由は、「甘くておいしい」だけではありません。
甘味と酸味のバランス、香り、色、みずみずしさなど、洋菓子と相性の良い特徴をいくつも持っています。
さらに、生のまま飾るだけでなく、ピューレ、ソース、コンフィチュール、ムースなど、さまざまな形に変化させることもできます。
そして栄養面では、ビタミンCなどを含む食材ですが、いちごを使った洋菓子を考えるときには、いちごだけでなく、他の材料も含めて考えることが大切です。
いちごを知ることは、単に「いちごの栄養を知る」ことではありません。
なぜこの食材がお菓子に使われるのか。
どんな材料と組み合わせると魅力が引き出されるのか。
そんな視点を持つことで、いつもの洋菓子が、少し違って見えてくるのではないでしょうか。
参考文献
・文部科学省「食品成分データベース|果実類/いちご/生」
文部科学省「食品成分データベース|いちご・生」
・日本調理科学会「イチゴの香気成分とジャム加工適性評価との関係」
J-STAGE「イチゴの香気成分とジャム加工適性評価との関係」

