タルトを焼き上げたら、底の一部が膨らんでしまった。生地を敷き込んだときには問題がなかったのに、焼成後に確認すると、底に凹凸ができている。そんな経験はありませんか?
タルト生地の底が浮く原因の一つは、生地と型の間などに空気が残っていることです。しかし、私は「空気が入ったから」という説明だけでは、十分ではないと考えています。
大切なのは、なぜ空気が入り込んだのか。フォンサージュの工程を振り返り、どこに改善の余地があるのかを考えることです。
フォンサージュで生地を型に密着させているか
タルト生地を型に敷き込む作業を、フォンサージュといいます。
この工程で意識したいのは、生地を型の底や側面に沿わせ、できるだけ隙間を残さないことです。
例えば、生地を型に置いたあと、底の部分だけを押さえて側面を十分に密着させていなかったり、角の部分に生地が浮いたまま残っていたりすると、生地と型の間に空気が入り込むことがあります。
また、生地を型に沿わせる際、無理に引っ張りながら敷き込むのも避けたいところです。生地に余計な張力がかかると、焼成中の収縮につながる場合があります。
私が大切だと考えるのは、単に生地を型に入れることではなく、底から角、側面まで、生地がどのような状態で収まっているかを確認することです。
生地を押さえる工程にも意味がある
フォンサージュでは、生地を型に密着させるために、指などを使って丁寧に押さえていきます。
このとき、底の部分を均一に整え、角に余分な隙間が残っていないかを確認することが大切です。
一方で、必要以上に強い力を加えたり、生地を何度も押し直したりすればよいというわけでもありません。生地の厚みが不均一になったり、部分的に生地が薄くなったりする可能性があります。
フォンサージュは、ただ生地を型に押し込む作業ではありません。焼き上がりの形や厚みを意識しながら、生地を型に沿わせる工程です。
作業を急いでしまうと、角や底の確認が不十分になることがあります。焼成後の状態だけを見るのではなく、敷き込みが終わった時点で生地の状態を確認することも、失敗を減らすためのポイントです。
ピケをすれば、底の浮きは防げるのか
タルト生地の底には、フォークなどで小さな穴を開ける「ピケ」を行うことがあります。ピケには、生地の下にたまった蒸気などを逃がし、焼成時の膨らみを抑える役割があります。
ただし、ピケをすれば必ず底が浮かなくなるわけではありません。
生地と型の間に空気が残っていたり、敷き込みの段階で隙間ができていたりすれば、ピケだけですべての問題を解決することはできません。また、ピケを行うかどうかや、その程度は、生地の種類や製法、焼成方法によっても異なります。
私は、ピケを失敗防止のための万能な方法として考えるのではなく、フォンサージュを適切に行ったうえで、必要に応じて取り入れる工程として捉えることが大切だと思います。
焼成後の凹凸から、作業を振り返る
タルトの底が浮いてしまったときは、焼成温度や時間だけを変更する前に、まずフォンサージュの工程を振り返ってみてください。
生地は型の底や側面に密着していたか。角に隙間が残っていなかったか。生地を無理に引っ張っていなかったか。ピケなどの工程は、使用している生地や製法に合っていたか。
こうした点を一つずつ確認することで、改善すべき箇所が見つかりやすくなります。
製菓の現場では、失敗した結果だけを見て対処するのではなく、そこに至るまでの作業を振り返ることが重要です。タルトの底が浮くという現象も、単に空気が入ったという結果で終わらせず、なぜ空気が残ったのかを考えることで、フォンサージュの技術を見直すきっかけになると考えています。



