パティスリーのショーケースを見ると、まず目に入るのは色や形、そして華やかなデザインかもしれません。
「きれいだな」
「おいしそうだな」
そんな感想を持つのは、当然のことです。
でも、パティシエという立場からショーケースを見ると、少し違ったところにも目がいきます。
このお菓子は、なぜこの形なんだろう。
なぜ、この素材を組み合わせているんだろう。
中にはどんな構造があるんだろう。
そして、このお店は何を表現したいんだろう。
一つのプチガトーから、そんなことを考えてしまいます。
今回、改めて手に取ったのが『cafe-sweets vol.231』です。
特集は「新商品から探る、プチガトーの最新トレンド」。
人気店の新作プチガトーを通して、味づくりやデコレーションの考え方が紹介されています。
プチガトーは、一見すると「小さなお菓子」です。
でも、実際には一つの中に、パティシエの考えがかなり詰まっています。
ビスキュイ、ムース、クリーム、ジュレ、クランチ。
それぞれのパーツには役割があり、組み合わせ方によって、口に入れたときの印象が変わります。
甘さだけではありません。
酸味、苦味、香り、食感、温度。
それらをどう組み合わせるのか。
さらに、ショーケースに並べたときの色や形、サイズまで考える必要があります。
そう考えると、プチガトーは単なる「ケーキ」ではなく、パティシエが自分の考えを表現する作品のようにも見えてきます。
そして面白いのは、同じ素材を使っていても、パティシエによって完成するお菓子がまったく違うことです。
チョコレートを使う。
いちごを使う。
ピスタチオを使う。
それだけでは、まだその店のお菓子にはなりません。
どんな味にするのか。
どんな食感を加えるのか。
どこまで素材を主張させるのか。
その選択の積み重ねによって、「この店らしい一個」が生まれていきます。
だから私は、プチガトーを見るとき、「流行っているかどうか」だけを見るのは少しもったいないと思っています。
むしろ、
「このお菓子を作ったパティシエは、何を考えたんだろう?」
と考えてみる。
そうすると、ショーケースの見え方が少し変わります。
『cafe-sweets vol.231』を読んでいて面白いのも、まさにそこです。
完成したお菓子を見るだけではなく、その味づくりやデコレーションを見ることで、パティシエがどのように一個のガトーを組み立てているのかを考えることができます。
私自身、こうした専門誌を見るときには、「このお菓子をそのまま作ってみたい」という気持ちだけではなく、
「自分ならどうするだろう?」
と考えるようにしています。
他店のお菓子を見ることは、単なる勉強ではありません。
自分の中にはなかった組み合わせや考え方を知り、自分のお菓子を考えるための引き出しを増やすことでもあります。
プチガトーは小さい。
でも、その一個の中には、素材選び、味の組み立て、食感、デザイン、そしてパティシエの感性まで詰まっています。
ショーケースに並んでいる一個のお菓子。
そこには、その店が大切にしているものが、意外なほど表れているのかもしれません。
『cafe-sweets vol.231』は、そんな視点でプチガトーを見るきっかけを与えてくれる一冊でした。
きれいなお菓子を見るだけで終わらせず、「なぜ、このお菓子なんだろう?」と考えてみる。
それだけでも、パティシエにとっては、新しい発見があると思います。
書籍情報
・作品名:cafe-sweets(カフェ-スイーツ) vol.231
・著者/編集:柴田書店 (編集)
・出版社:柴田書店
・発売日:2025/8/5
・ページ数:128ページ
・ISBN-10:4388809357
・ISBN-13:978-4388809356


