パティシエとして仕事をしていると、「この作業は、なぜ必要なのだろう?」と考えることがあります。
材料を混ぜる順番、温度、混ぜ方、生地の状態、焼き上がり。
レシピには作り方が書かれていますが、実際の製菓では、ただ手順を覚えるだけでは対応できない場面もあります。
なぜこの材料を使うのか。
なぜこの温度なのか。
なぜこの状態まで混ぜるのか。
こうした「なぜ」を理解することが、パティシエとして技術を身につけていくうえで大切なのだと思います。
そんなことを考えていたときに、改めて手に取りたくなったのが、川北末一さん著、辻調理師専門学校監修の『プロのためのわかりやすいフランス菓子』です。
パティシエの仕事は「レシピを覚えること」ではない
お菓子づくりを学び始めた頃は、レシピを見ながら一つひとつの工程を覚えることに精一杯です。
しかし、経験を重ねていくと、少しずつ見方が変わってきます。
同じレシピでも、材料の状態や季節、作業する環境によって生地の状態が変わる。
そのときに必要になるのが、「なぜ、そうするのか」という製菓の基本的な考え方です。
例えば、卵、小麦粉、砂糖、乳製品などは、どれもお菓子づくりには欠かせない材料です。
でも、それぞれが単に「材料」として存在しているわけではありません。
生地をつくったり、膨らませたり、固めたり、食感をつくったり、風味を加えたり。
材料には、それぞれ製菓の中で果たしている役割があります。
Lumiaでも、栄養の基本から三大栄養素について考えてきました。
お菓子を健康という視点から考えるときも、まずは「何が入っているのか」を知ることが大切です。
そして、パティシエの視点から見ると、そこからさらに「その材料が、お菓子の中でどんな働きをしているのか」というところまで興味が広がっていきます。
「なぜ?」を理解しながら学べるフランス菓子の本
『プロのためのわかりやすいフランス菓子』は、フランス菓子をつくるために必要な技術や知識を、基本から応用へと学べるように構成された専門書です。
本書では、フランス菓子の基礎知識から始まり、スポンジ生地やバター生地、パイ生地、シュー生地、メレンゲ、発酵生地、デザート、氷菓、プティ・フールなど、幅広いジャンルが扱われています。
特に興味深いのは、単純にレシピだけを並べた本ではないことです。
柴田書店の紹介では、基本的な生地から応用へと自然に学べる構成になっており、作業のポイントや製菓用語なども盛り込まれています。
また、工程はカラー写真で紹介され、「なぜこのような作り方をするのか」「どうすればうまくつくれるのか」といったポイントも解説されています。
これは、製菓を学ぶ人にとって非常に大切な部分だと思います。
「こうしてください」と覚えるだけではなく、「なぜ?」を考えながら作る。
その積み重ねが、レシピに書かれていない状況に出会ったときの判断力につながっていくからです。
お菓子を学ぶことは、材料を学ぶことでもある
本書の目次を見ると、フランス菓子の基礎知識の中に「材料について」という項目があり、小麦粉、卵、砂糖、乳製品などについても扱われています。
これは、Lumiaが大切にしている考え方とも重なります。
お菓子を知ろうとすると、自然と材料について知りたくなる。
そして材料について知ろうとすると、栄養や食品そのものへの興味も生まれてくる。
例えば、ナッツについて調べてみると、製菓材料としての香りや食感だけではなく、栄養面から見た特徴にも目が向きます。
「お菓子に使われているから知る」のではなく、「材料を知ることで、お菓子の見え方が変わる」。
これも、パティシエとして製菓を学ぶ面白さの一つではないでしょうか。
2000年代の本だからこそ感じる「基本」の強さ
『プロのためのわかりやすいフランス菓子』は、2004年に柴田書店から刊行された本です。
420ページにわたり、フランス菓子の基礎から幅広い菓子まで収録されています。
新しい製菓技術や流行のお菓子を紹介する本とは、少し立ち位置が違います。
むしろ、長く変わらない製菓の基本を確認するための本として興味深い一冊です。
パティシエの仕事では、新しい技術を学ぶことももちろん大切です。
一方で、新しい技術を理解するためには、その土台となる基本的な製菓理論や技術を知っていることも重要です。
だからこそ、昔から使われてきた専門書を改めて読むことで、「自分は基本をきちんと理解できているだろうか」と振り返るきっかけにもなります。
パティシエとして、もう一度「基本」を考える
製菓の仕事を続けていると、経験によって自然に身につくことがあります。
しかし、感覚だけでできるようになった作業ほど、「なぜできるのか」を言葉にするのは難しいものです。
だからこそ、ときどき基本に戻る。
材料のことを調べる。
製法を振り返る。
昔学んだ技術をもう一度確認する。
そうすることで、今まで何となく行っていた作業にも、新しい発見があるかもしれません。
『プロのためのわかりやすいフランス菓子』は、そんな「基本をもう一度学び直す」という目的にも向いている一冊だと感じました。
Lumiaでは、これからもお菓子を入り口に、材料や栄養、製菓の技術について考えていきます。
お菓子を食べるだけではなく、「なぜこのお菓子はおいしいのだろう」「この材料にはどんな役割があるのだろう」と少し立ち止まって考えてみる。
そんな視点を持つと、いつものお菓子が少し違って見えてくるかもしれません。
『プロのためのわかりやすいフランス菓子』
『プロのためのわかりやすいフランス菓子』は、川北末一さんが著し、辻調理師専門学校が監修したフランス菓子の専門書です。
420ページの中に、フランス菓子の基礎知識から、生地、クリーム、パイ、シュー、発酵菓子、デザート、冷菓など、幅広い内容が収録されています。
「レシピを増やしたい」という人だけではなく、「製菓の基本をもう一度整理したい」「なぜこの作業をするのか理解したい」という人にとっても、興味深い専門書です。
パティシエの仕事をしている方、これから製菓を本格的に学びたい方。
そして、フランス菓子そのものをもっと深く知りたい方にとって、長く手元に置いておきたい一冊なのではないでしょうか。
お菓子をつくる。
その先にある「なぜ?」を考える。
そんな学びを始めるきっかけとして、こうした専門書を手に取ってみるのも面白いと思います。
書籍情報
・作品名:プロのためのわかりやすいフランス菓子
・著者/編集:辻調理師専門学校 (監修), 川北 末一 (著)
・出版社:柴田書店
・発売日:2006/7/15
・ページ数:420ページ
・ISBN-10:4388059447
・ISBN-13:978-4388059447


