パフェを見ていると、つい「きれいだな」と思ってしまいます。
グラスの中にフルーツやクリーム、アイス、ソースなどが重なり、上から見ても横から見ても華やかです。
でも、パティシエという立場から見ると、パフェは単に材料をきれいに盛り付けたデザートではありません。
むしろ気になるのは、
「なぜ、この組み合わせなのだろう?」
ということです。
パフェは「何を入れるか」だけではない
ケーキをつくるときも、材料の組み合わせは重要です。
甘さ、酸味、苦味、香り、食感。
それぞれの要素を考えながら、全体のバランスを組み立てていきます。
パフェも同じです。
ただし、パフェにはケーキとは違った面白さがあります。
一つのグラスの中で、食べ進めるたびに味や食感が変わっていくからです。
最初はフルーツの酸味。
次にクリームのまろやかさ。
その後にアイスの冷たさや、ナッツなどの香ばしさ。
さらにソースや焼き菓子が加わる。
もちろん、すべてのパフェがこのような構成になっているわけではありません。
それでも、パフェには「食べる順番」まで含めてデザートを設計できる面白さがあります。
自由だからこそ、組み立てが難しい
パティシエの仕事では、制約の中でお菓子をつくることも少なくありません。
販売する商品なら、持ち運びや保存、提供までの時間などを考える必要があります。
一方、店内で提供するデザートなら、その場で食べてもらうことを前提に、温度や食感をより自由に組み合わせることができます。
温かいものと冷たいもの。
なめらかなものと、サクサクしたもの。
甘いものと酸味のあるもの。
こうした組み合わせを、一皿や一つのグラスの中で表現できます。
ただ、自由度が高いからといって、何でも入れればよいわけではありません。
むしろ、使う素材を増やすほど、全体をまとめる難しさも出てきます。
「何を加えるか」だけではなく、「何を加えないか」。
ここも、パティシエがデザートを考えるときには大切な部分だと思います。
パフェを見ると、パティシエの考え方が見えてくる
パフェの面白さは、完成した姿だけではありません。
そのグラスの中に、どんな意図があるのかを考えてみると、見え方が変わります。
なぜこのフルーツなのか。
なぜこのクリームなのか。
なぜこの食感を加えたのか。
なぜ、この順番なのか。
そんなことを考えながら食べてみると、パフェは「きれいなデザート」から、「味を組み立てたデザート」へと変わって見えてきます。
これは、普段のお菓子づくりにも通じるところがあります。
小麦粉、砂糖、卵、油脂など、それぞれの材料には役割があります。
以前紹介した『新版 お菓子「こつ」の科学』でも、お菓子づくりにある「なぜ?」を科学的な視点から考えました。
材料の性質を知ることと、味や食感を組み立てること。
方向は違っても、どちらも「なんとなく」から一歩進んで、お菓子を見るための視点だと思います。
最近のデザートは、さらに自由になっている
そんなことを考えていたときに目に留まったのが、『cafe-sweets vol.230』です。
今回の特集は「パフェとデザートとかき氷」。
なかでも「パフェ、味の組立てとプレゼンテーションのメソッド」では、パフェを単なる盛り付けとしてではなく、味の構成や見せ方という視点から紹介しています。
さらに、デザートコースやアフタヌーンティー、レストランデザート、かき氷など、現在のデザート表現を幅広く取り上げています。
こうして見ると、パティシエが表現できる「お菓子」の形は、ずいぶん広がっています。
ケーキを一個つくって販売する。
それだけではありません。
一皿のデザートとして提供する。
グラスの中で味を組み立てる。
コースの流れの中でデザートを考える。
季節の素材を使って、かき氷として表現する。
同じ「お菓子」でも、提供する場所や形が変われば、パティシエの考え方も変わってきます。
お菓子を「つくる側」から見てみる
パフェを食べるときは、もちろん見た目や味を楽しむだけでも十分です。
でも、もしパティシエの仕事に興味があるなら、
「どうして、この組み合わせなんだろう?」
と少し考えてみるのも面白いと思います。
そうすると、華やかなパフェの中に、素材の選び方や温度、食感、香り、盛り付け、食べる順番など、さまざまな技術が隠れていることに気づきます。
そして、その視点を持ってデザートを見ると、普段食べているお菓子も少し違って見えてきます。
『cafe-sweets vol.230』は、そんな「つくる側の視点」から、パフェやデザートの現在を眺めてみたいときに興味深い一冊です。
パティシエがどのようにデザートを考え、どのように味を組み立てているのか。
そんな視点でページをめくってみると、パフェの見方も少し変わるかもしれません。
書籍情報
編集:柴田書店
出版社:柴田書店
発売日:2025年6月5日
ページ数:128ページ
ISBN:978-4-388-80934-9


