牛乳、生クリーム、バター、チーズ。
これらは、私たちの食生活で身近な食品です。
そして、洋菓子の世界でも欠かすことのできない材料です。
スポンジケーキに使われる牛乳。
ケーキやムースに使われる生クリーム。
焼き菓子やパイ生地に使われるバター。
チーズケーキなどに使われるチーズ。
同じ「乳製品」というカテゴリーに入る食品でも、製菓の現場では、それぞれまったく違う役割を持っています。
一方、栄養という視点から見ても、牛乳、生クリーム、バター、チーズは同じものではありません。
含まれる栄養素や量には違いがあります。
そこで今回は、乳製品を二つの視点から見てみます。
一つは、栄養のレンズ。
もう一つは、パティシエのレンズです。
そして最後に、この二つの視点を一つにつなげて、
「乳製品を知ることは、お菓子を知ることにもつながる」
というところまで考えてみたいと思います。
まず「乳製品」とは何でしょうか
最初に確認しておきたいのが、「乳製品」という言葉です。
乳製品とは、一般的には牛などの乳を原料として作られる食品を指します。
身近なものだけでも、
牛乳、生クリーム、バター、チーズ、ヨーグルト
などがあります。
ただし、これらを一括りにして「乳製品だから同じような栄養を含んでいる」と考えるのは適切ではありません。
例えば、牛乳とバターでは、水分量や脂質量などが大きく異なります。
チーズも、種類によって成分や製造方法が異なります。
つまり、
「乳製品」という言葉は一つでも、その中身はさまざまです。
これは、栄養を考えるうえでも、製菓を考えるうえでも大切なポイントです。
【栄養のレンズ】乳製品を食品として見る
ここからは、パティシエという立場をいったん横に置きます。
乳製品を、栄養という視点から見てみましょう。
乳製品には、カルシウムやたんぱく質など、私たちの食生活を考えるうえで知っておきたい栄養素が含まれています。
例えば、文部科学省の食品成分データベースでは、普通牛乳100gあたりに、たんぱく質3.3g、脂質3.8g、カルシウム110mgが含まれるとされています。
一方、無塩バター100gでは、脂質が81.0g、カルシウムは15mgとなっています。
同じ乳製品でも、食品としての成分構成が大きく異なることが分かります。
つまり、
「乳製品=カルシウムが多い食品」
だけでは、乳製品の全体像を十分に説明できません。
牛乳、生クリーム、バター、チーズなど、それぞれを別の食品として考える必要があります。
「乳製品」という言葉だけで判断しない
これは、Lumiaで栄養を考えるときに大切にしたい考え方です。
食品を「○○が多い食品」と一つの特徴だけで覚えてしまうと、その食品の別の側面を見落としてしまうことがあります。
例えば牛乳なら、カルシウムだけではありません。
たんぱく質や脂質なども含まれています。
バターなら、脂質が食品の大きな特徴になります。
チーズなら、種類によって成分が異なります。
生クリームも、乳脂肪分の違いなどによって性質が変わります。
そのため、食品を見るときには、「何が含まれているか」だけでなく、
「どんな食品なのか」を考えることが大切です。
牛乳を栄養の視点から見る
乳製品の中でも、特に身近なのが牛乳です。
牛乳には、たんぱく質、脂質、炭水化物、カルシウムなどが含まれています。
食品成分データベースを見ると、普通牛乳100gあたりのエネルギーは61kcal、たんぱく質は3.3g、脂質は3.8g、炭水化物は4.8g、カルシウムは110mgです。
牛乳を「カルシウムを含む食品」として知ることも大切ですが、それだけではありません。
たんぱく質や脂質なども含む食品として、食生活全体の中で考えることができます。
これは、以前の記事で紹介した「三大栄養素」の話ともつながります。
栄養素を一つずつ覚えるだけではなく、
一つの食品の中に、どのような栄養素が含まれているのかを見る。
そうすると、栄養の知識が少しずつ食品と結びついてきます。
【パティシエのレンズ】牛乳は「液体の材料」
ここからは、パティシエの視点です。
牛乳を製菓材料として見ると、まず大きな特徴として、
「液体の材料」
であることが挙げられます。
洋菓子では、水分を加えるために牛乳を使うことがあります。
また、牛乳に含まれる乳成分も、菓子の風味や食感に関係します。
例えば、カスタードクリーム。
牛乳は、卵黄や砂糖などと組み合わせて、クリームを作るための重要な材料です。
プリンでも、卵と牛乳を組み合わせます。
焼き菓子やパンなどでも、レシピによって牛乳が使われることがあります。
つまり、パティシエにとって牛乳は、
「飲むための食品」であると同時に、「菓子を作るための材料」
でもあります。
生クリームを栄養の視点から見る
次は生クリームです。
生クリームは、牛乳と同じ乳製品ですが、栄養面では同じものではありません。
生クリームには脂質が多く含まれます。
そして、製品によって乳脂肪分などが異なります。
そのため、「生クリーム」という名前だけで栄養成分を一つに決めつけるのではなく、商品や種類によって違いがあることを意識する必要があります。
食品を正しく見るためには、
「乳製品だから○○」
と考えるのではなく、
「この食品にはどんな特徴があるのか」
を見ることが大切です。
これは、生クリームに限った話ではありません。
生クリームをパティシエの目で見る
パティシエにとって、生クリームは非常に重要な材料です。
ケーキのデコレーション。
ムース。
ガナッシュ。
クリーム。
ソース。
さまざまな洋菓子に使われています。
そして、生クリームはただ混ぜればよい材料ではありません。
泡立て方によって状態が変わります。
泡立てが足りなければ、形を保ちにくいことがあります。
反対に、泡立てすぎると状態が変わり、滑らかなクリームとして扱いにくくなります。
温度も重要です。
生クリームを扱うときには、レシピの数字だけではなく、その時点での状態を見ることが大切です。
これは、23年間パティシエとして仕事をしてきた中で、日々向き合ってきた部分です。
23年間、乳製品を扱ってきて感じること
乳製品は、卵と同じように「レシピに書かれた数字だけでは語り切れない材料」だと感じます。
例えば、同じ生クリームでも、乳脂肪分や温度、泡立て方によって、製菓での扱いやすさや仕上がりが変わります。
バターも同じです。
冷たい状態。
室温に戻した状態。
溶かした状態。
それぞれで、製菓における役割が変わってきます。
パイ生地やクッキー、バターケーキなどでは、バターの状態を考えながら作業する必要があります。
「バターを何g使うか」だけではなく、
「そのバターをどの状態で使うのか」
まで考える。
これが、製菓の材料を扱うということです。
食品成分表を見るだけでは分からない部分ですが、パティシエにとっては非常に重要な視点です。
バターを栄養の視点から見る
バターも乳製品の一つです。
一方で、牛乳とは栄養成分の構成が大きく異なります。
文部科学省の食品成分データベースによると、無塩バター100gあたりの脂質は81.0gです。
このことからも、バターは脂質を多く含む食品であることが分かります。
だからこそ、バターを牛乳と同じように考えるのではなく、それぞれの食品の特徴を知ることが大切です。
「乳製品」という大きなカテゴリーの中にも、栄養面ではさまざまな食品がある。
このことを知っておくと、食生活を見る目も少し変わってきます。
バターをパティシエの目で見る
そして、パティシエにとってバターは非常に重要な材料です。
クッキー。
パウンドケーキ。
フィナンシェ。
パイ。
クロワッサンなどのヴィエノワズリー。
さまざまな菓子や生地に使われています。
ここで面白いのが、バターの「状態」です。
例えば、バターをクリーム状にして砂糖と合わせる方法があります。
一方で、溶かして使うこともあります。
また、冷たいバターを小麦粉と合わせて、パイ生地などを作ることもあります。
同じバターでも、
「どの状態で使うか」
によって製菓上の意味が変わります。
これも、乳製品を「パティシエのレンズ」で見る面白さです。
チーズを栄養の視点から見る
乳製品の最後の例として、チーズを見てみましょう。
チーズも、カルシウムやたんぱく質などを含む食品として知られています。
ただし、チーズには非常に多くの種類があります。
製造方法や熟成の有無などによって、風味や食感だけでなく、栄養成分も異なります。
そのため、「チーズなら全部同じ」と考えることはできません。
食品について知るときには、カテゴリーだけではなく、個々の食品の特徴を見ることが大切です。
チーズをパティシエの目で見る
パティシエにとってチーズといえば、まず思い浮かぶのが、
チーズケーキではないでしょうか。
クリームチーズを使ったベイクドチーズケーキ。
レアチーズケーキ。
チーズを使ったさまざまな洋菓子があります。
チーズは、そのまま食べても食品ですが、菓子に組み込むことで、酸味、コク、香り、食感などを生み出す材料にもなります。
ここでも、
「チーズはカルシウムを含む食品」
という栄養の情報だけでは、パティシエが見ているチーズの姿は見えてきません。
製菓材料として見ることで、別の一面が見えてきます。
【二つのレンズ】乳製品を一つの食品群として考える
ここまで、
牛乳。
生クリーム。
バター。
チーズ。
を見てきました。
栄養のレンズから見ると、それぞれ含まれる栄養素や量が異なります。
パティシエのレンズから見ると、それぞれ製菓における役割が異なります。
牛乳は、液体として生地やクリームなどに使われます。
生クリームは、ホイップやムース、ガナッシュなどに使われます。
バターは、生地やパイなどに使われます。
チーズは、チーズケーキなどの材料になります。
同じ「乳製品」でも、まったく違います。
しかし、ここで共通点もあります。
それは、
どれも乳を起点として、食品としても製菓材料としても利用されている
ということです。
栄養と製菓は、別々の話ではない
ここまで読んでいただくと、
「栄養の話と製菓の話は、まったく別なのでは?」
と思われるかもしれません。
確かに、見ているものは違います。
栄養では、「何が含まれているのか」を見る。
製菓では、
「どんな性質があり、どう使うのか」
を見る。
しかし、対象は同じです。
一つの食品を違う角度から見ているだけです。
牛乳を栄養の食品として見る。
牛乳を製菓材料として見る。
生クリームを栄養の食品として見る。
生クリームを製菓材料として見る。
バターを栄養の食品として見る。
バターを製菓材料として見る。
こうして二つのレンズを重ねると、食品が立体的に見えてきます。
乳製品を知ることは、お菓子を知ること
そして、ここが今回の記事で最も伝えたいところです。
私たちが普段食べている洋菓子には、たくさんの材料が使われています。
その材料一つ一つには、それぞれ役割があります。
卵なら、卵黄の乳化や卵白の起泡。
牛乳なら、水分や乳成分。
生クリームなら、脂肪分やホイップによる食感。
バターなら、風味や食感、生地への働き。
チーズなら、酸味やコク、独特の風味。
こうして材料のことを知っていくと、いつも食べているお菓子の見え方が少し変わってきます。
「このケーキには、なぜ生クリームが使われているのだろう?」
「この焼き菓子には、なぜバターを使うのだろう?」
「チーズケーキのコクは、どこから生まれているのだろう?」
そんな疑問が生まれてきます。
そして、その疑問が、さらにお菓子を知るきっかけになります。
だから私は、
乳製品を知ることは、お菓子を知ることにもつながる
と考えています。
Lumiaが大切にしたい「食品を見る二つのレンズ」
今回の記事では、乳製品を二つの視点から見てきました。
栄養のレンズでは、
「どのような栄養素を含んでいるのか」
を見る。
パティシエのレンズでは、
「製菓ではどのような役割を持つのか」
を見る。
そして、この二つを合わせることで、
「食品としての乳製品」と「製菓材料としての乳製品」
の両方が見えてきます。
これは、Lumiaがこれから大切にしていきたい考え方です。
健康や栄養について知ることは、難しい専門知識を覚えることだけではありません。
普段食べている食品を少し違った角度から見てみる。
そして、その食品がどのようにお菓子に使われているのかを知る。
そうすることで、栄養とお菓子が少しずつつながっていきます。
次は「カカオ」へ
乳製品について考えたところで、次に取り上げたいのが、「カカオ」です。
チョコレートは、洋菓子の世界では非常に身近な存在です。
しかし、「チョコレート」と「カカオ」は同じものではありません。
カカオ豆から、どのようにチョコレートという製菓材料が生まれるのか。
カカオにはどのような成分が含まれているのか。
そして、パティシエはカカオやチョコレートをどのように扱っているのか。
卵や乳製品とは、また違った「二つのレンズ」で見ることができます。
次回は、そんなカカオについて考えてみます。
まとめ
乳製品には、牛乳、生クリーム、バター、チーズなど、さまざまな食品があります。
栄養という視点から見ると、それぞれ含まれる栄養素や量には違いがあります。
一方、パティシエの視点から見ると、それぞれが異なる製菓上の役割を持っています。
牛乳は生地やクリームなどの材料に。
生クリームはホイップやムースなどに。
バターは焼き菓子やパイなどに。
チーズはチーズケーキなどに。
同じ「乳製品」というカテゴリーに入っていても、その性質と使い方はさまざまです。
だからこそ、栄養のレンズとパティシエのレンズの二つから見ることに意味があります。
食品の栄養を知る。
製菓材料としての性質を知る。
そして、その二つをつなげて考える。
そうすると、いつものお菓子が少し違って見えてくるかもしれません。
乳製品を知ることは、お菓子を知ることにもつながります。
Lumiaではこれからも、パティシエにとって身近な材料を一つずつ取り上げながら、「栄養」と「製菓」の二つの視点から食品を見ていきます。
次回は、洋菓子には欠かせない「カカオ」について考えていきます。
なお、公開前には栄養成分の数値を文部科学省「食品成分データベース」の該当食品・該当製品区分と照合することをおすすめします。特に「生クリーム」「チーズ」は製品・種類による差が大きいため、今回の本文では不用意に一つの数値へ固定していません。

