なぜ卵は洋菓子に欠かせない?卵黄と卵白から見るお菓子の不思議

食材と栄養

ケーキ、プリン、シュークリーム、カスタードクリーム、マカロン……。

洋菓子を思い浮かべると、「卵」を使ったお菓子がたくさんあります。

卵は家庭料理でもおなじみの食材ですが、パティシエにとっては単なる材料ではありません。

実は卵には、「泡立つ」「固まる」「混ざりやすくする」など、洋菓子を作るうえでとても重要な働きがあります。

しかも面白いのは、卵黄と卵白で得意な仕事が違うことです。

では、なぜ卵はこれほど多くの洋菓子に使われているのでしょうか。

卵黄と卵白は、同じ卵でも仕事が違う

卵を割ると、黄色い「卵黄」と透明に近い「卵白」に分かれています。

同じ卵の中に入っていますが、製菓ではそれぞれの性質を利用して使い分けます。

卵白の代表的な特徴が「泡立つ」ことです。

卵白を泡立てると、空気を抱え込んだ細かな泡ができます。

この性質を利用した代表的なお菓子が、メレンゲです。

一方、卵黄には脂質が含まれており、クリームや生地などにコクやなめらかさを与えるだけでなく、異なる性質を持つ材料を混ざりやすくする「乳化」にも関わります。

つまり、卵は一つの食材でありながら、卵黄と卵白で異なる役割を持っているのです。

「泡立つ」から、ふんわりしたお菓子ができる

卵の性質を知ると、スポンジケーキの見方が変わります。

スポンジケーキの生地を作るとき、卵を泡立てて空気を取り込み、その泡を利用して生地を作る方法があります。

泡立った卵に小麦粉などを加えて焼くことで、ふんわりとした食感につながります。

ここで重要なのは、「卵そのものが膨らむ」ということではありません。

卵を泡立てることで取り込まれた空気が、生地の構造を作る一部として働いているのです。

そして、焼いている間に生地の温度が上がると、卵のたんぱく質などが変化して固まり、生地の形を支えます。

「卵を泡立てる」という一見単純な作業にも、実はお菓子を作るための重要な意味があります。

プリンが固まるのも、卵の力

卵のもう一つの代表的な性質が「固まる」ことです。

プリンを思い浮かべてみてください。

液体だった卵液が加熱されると、やがてなめらかなプリンになります。

これは、卵に含まれるたんぱく質が熱によって変化し、互いに結びついて構造を作るためです。

ただし、加熱すればするほど良いわけではありません。

温度や加熱時間などの条件によって、仕上がりの状態は変わります。

なめらかなプリンを作りたいのか、しっかりした食感にしたいのか。

目指す仕上がりによって、加熱の考え方も変わります。

卵は「固まる」という性質を利用するだけでも、さまざまなお菓子を生み出せるのです。

卵黄は「混ざりにくいもの」をつなぐ

卵黄には、洋菓子作りで重要な「乳化」に関係する成分が含まれています。

乳化とは、本来混ざりにくい油と水のようなものを、細かな粒子として分散させ、安定した状態にすることです。

お菓子作りでは、バターなどの油脂と水分を含む材料を扱う場面が多くあります。

そのとき、卵黄の性質が生地やクリームの状態に関係します。

例えば、カスタードクリームを作るときには、卵黄を使って牛乳などと合わせ、加熱することで、なめらかで濃厚なクリームを作ります。

卵黄は、味にコクを加えるだけではありません。

材料をまとめ、なめらかな状態を作るためにも活躍しています。

同じ卵なのに、お菓子によって仕事が変わる

ここまで見てくると、卵がなぜ多くの洋菓子に使われるのかが少し見えてきます。

スポンジケーキでは、泡立ちを利用する。

プリンでは、加熱によって固まる性質を利用する。

カスタードクリームでは、卵黄の性質を利用する。

メレンゲでは、卵白の泡立つ性質を利用する。

つまり、卵は「卵を入れればおいしくなる」という単純な材料ではありません。

どの性質を、どのように利用するかを考えて使う材料なのです。

パティシエから見ると、卵は「扱い方」が面白い

私自身、23年間パティシエとして製菓に携わってきましたが、卵は非常に奥深い材料だと感じています。

例えば、卵を泡立てるとき。

泡立てが足りなければ、目指す生地の状態にならないことがあります。

反対に、泡立てすぎても、その後の作業に影響することがあります。

また、卵を加熱するときも、温度管理が重要です。

少し条件が変わるだけで、クリームのなめらかさやプリンの食感などが変わってきます。

レシピには「卵○個」と書かれていても、パティシエはその先にある「卵の状態」を見ています。

卵の温度はどうか。

泡の状態はどうか。

他の材料とどのようになじんでいるか。

こうした小さな変化を見ながら、お菓子を仕上げていきます。

卵にはどんな栄養がある?

ここで、少しだけ栄養にも目を向けてみましょう。

卵には、たんぱく質をはじめ、脂質、ビタミン、ミネラルなど、さまざまな栄養素が含まれています。

特に卵は、卵黄と卵白で含まれる成分の特徴が異なります。

ただし、今回注目したいのは「卵は栄養豊富」ということだけではありません。

卵は、栄養を含む食品であると同時に、洋菓子の構造や食感を作るための機能性の高い食材でもあります。

この二つの顔を持っていることが、卵の面白さなのです。

卵を知ると、洋菓子がもっと面白くなる

普段何気なく食べているプリンやケーキも、

「どうして固まるのだろう?」

「どうしてふんわりするのだろう?」

「どうしてカスタードクリームはなめらかなのだろう?」

と考えてみると、その答えの中に卵が登場します。

卵は、洋菓子の味を作るだけではありません。

泡立ち、凝固、乳化など、さまざまな性質を利用することで、お菓子の形や食感そのものを作っています。

だからこそパティシエにとって卵は、昔から身近でありながら、何度使っても奥深い材料なのです。

まとめ

卵は、洋菓子にコクや風味を加えるだけでなく、泡立つ、固まる、乳化に関わるなど、さまざまな性質を持っています。

卵白はメレンゲやスポンジ生地の泡立ちに、卵は加熱による凝固を利用したプリンなどに、卵黄はカスタードクリームや乳化を利用する生地などに活用されています。

一つの食材なのに、使い方によってまったく違う仕事をする。

これこそが、卵という食材の面白さです。

次にケーキやプリンを食べるときは、「このお菓子の中で、卵はどんな仕事をしているのだろう?」と考えてみてください。

そうすると、いつもの洋菓子が、少し違って見えてくるかもしれません。

参考文献・参考資料

・文部科学省「食品成分データベース」
食品成分データベース

・農林水産省「たまごの知識」
農林水産省「たまごの知識」

・J-STAGE「日本調理科学会誌」
J-STAGE「日本調理科学会誌」

タイトルとURLをコピーしました