ザッハートルテ、リンツァートルテ、カーディナルシュニッテン。
パティシエなら、一度は耳にしたことのあるウィーン菓子ではないでしょうか。
名前を知っている。
作り方も知っている。
でも、「なぜ、このお菓子が生まれたのか?」と聞かれると、意外と答えられない。
私自身、パティシエとして仕事をしてきましたが、改めて考えてみると、お菓子には「作り方」だけではなく、その背景にある歴史や文化があります。
そんなことを考えさせてくれたのが、『ウィーン菓子図鑑 お菓子の由来と作り方』です。
この本で紹介されているのは、ウィーンを代表する80種類のお菓子。
もちろん、それぞれのお菓子の作り方も紹介されています。
でも、この本の面白さは、レシピだけではありません。
お菓子の名前の由来や誕生した背景、使われている材料、そしてウィーンのカフェ文化まで紹介されています。
つまり、「このお菓子はどう作るのか」だけではなく、
「なぜ、このお菓子が生まれたのか」
まで知ることができます。
これは、パティシエにとって意外と大切なことだと思います。
例えば、同じ「チョコレートを使ったケーキ」でも、そのお菓子が生まれた時代や土地、人々の暮らしを知ると、見え方が変わります。
材料にも意味がある。
形にも理由がある。
そして、長い時間をかけて残ってきたこと自体にも意味がある。
お菓子を歴史や文化の中から眺めることで、レシピだけを見ていたときには気づかなかったことが見えてきます。
私は、パティシエにとって「お菓子の背景を知ること」は、技術を身につけることとは別の意味で大切だと思っています。
技術があれば、お菓子を作ることはできます。
でも、そのお菓子がどこから来たのかを知っていれば、作るときの視点が変わる。
そして、その知識は新しいお菓子を考えるときにも役立ちます。
伝統菓子をそのまま作るだけではなく、
「この考え方を現代のお菓子に取り入れたらどうなるだろう?」
そんな発想につながるからです。
さらに、この本ではウィーンのカフェ文化についても触れています。
ここも、私が面白いと感じたところです。
お菓子は、お菓子だけで存在しているわけではありません。
誰と食べるのか。
どこで食べるのか。
どんな時間に食べるのか。
そうした文化や生活と結びついて、お菓子はその土地のものとして根付いていきます。
だからこそ、ウィーン菓子を知ることは、単に「海外のお菓子を覚える」ということではないのだと思います。
お菓子が人の生活の中でどのように育ってきたのかを知ること。
それは、パティシエとして自分が作るお菓子を考えるうえでも、きっと無駄にはなりません。
もし、ザッハートルテやリンツァートルテなどの名前を知っているけれど、「その先」をもっと知りたいと思ったら。
『ウィーン菓子図鑑』を手に取ってみると、お菓子の見え方が少し変わるかもしれません。
レシピを覚えるためだけではなく、お菓子の背景を知るために読む。
ページをめくりながら、「このお菓子は、なぜ生まれたんだろう?」と考えてみる。
そんな読み方ができる一冊です。
パティシエにとって、お菓子を作る技術だけが引き出しではありません。
歴史や文化を知ることも、いつか新しいお菓子を生み出すための引き出しになる。
『ウィーン菓子図鑑』は、そんなことを改めて感じさせてくれる本でした。
書籍情報
・作品名:ウィーン菓子図鑑 お菓子の由来と作り方: 伝統からモダンまで、知っておきたい菓子80選とカフェ文化
・著者/編集:小菅 陽子 (著)
・出版社:誠文堂新光社
・発売日:2022/10/12
・ページ数:224ページ
・ISBN-10:4416522460
・ISBN-13:978-4416522462





